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TOPページ > DCSのクラフトマンシップ > 理想の光を求めて
 
2008年6月更新 DCSのクラフトマンシップ 第4回 理想の光を求めて 世界的デザイナー内山章一氏。
									和も洋の空間も内包する氏の照明デザインに対する取組み
写真 内山章一 1947年東京生まれ。
1977年に自らのデザイン事務所を設立以来、柔かい間接照明を効果的に扱うデザインを追及。壁面や天井面の照らしかたによって明るさの強弱を生み、空間や物体をより立体的に、より自然にみせる心地よい照明をデザインテーマとしている。これまでにグッド・デザイン賞(日本)、IF賞(ドイツ)を受賞。ルイスポールセン社のペンダントEnigma825により3度目のIF賞(2007年)受賞となった。《エニグマ》は先行発売されたデンマークでも既に“新しいクラシック”として絶大な評価を受けている。
柔らかい光、上質な光
「人がリラックスするときは、高めの光でなく低い光でないと落ち着かないんですよ。」と内山氏。氏の人に対する思いやりは形の美しさだけではない。

Q: 内山様は様々な照明作品を手掛けてらっしゃいますが、基本的に心がけているテーマ とはどのようなものですか?

内山氏: 現状の日本の住宅は、光の使い方が 一室一灯で天井からの光なんですよ。天井から器具を吊るして、サークライン(蛍光灯)を入れるという、それ一つで部屋を明るくするというやり方なんですよね。

実は、その天井からの光というのは、いわゆる日中の太陽光と同じで、上からの光なんですよ。昼間の活動的な時というのはそれでもいいのですが太陽が沈んでくると、横へ傾きますよね。照明も同じように、人間がリラックスするときというのは、高めの光ではなくて、低い光でないと落ち着かないんですよ。

それと、くつろいだときに光で顔がきれいに見えるというのは横からの光なんですね。

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左:内山氏デザインのMisty(ミスティ)
右:PORTA(ポルタ)

よく上からの光だと顔にクマができたりとかいいますけど日本の住宅の場合は、昼間の太陽と同じ光で夜なんかもテレビ見てたりしてますから、結局明るい、眩しい光がテレビに写ったり、 ガラスに写ったりしてしまうので非常にリラックスできる時間というのがとりづらいという光の使い方なんですね。

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壁面にぶつかった光で光量をとるのが理想的。
  実際照明のことを知っている人は別なのですけど、一般の人は勿論ですがインテリアコーディネーターでさえそういうことをあまり知らないので、 明るくすれば気持ちよいという感じで明るくするんですけど実際部屋というのは明るくすればするほど、ものはよくは見えるのだが、(明るさが)均一になってしまってものの質感が一切なくなってしまうんですね。

それと、部屋がのっぺりしてしまって奥行がなくなってしまうんですね。すると、物も単調に見えるし、質感も悪くなるし、インテリア全体に高級感が出ない。(日本の一般の住宅の場合は)そういうインテリアなんですね。

だからそうでなくて必要なところに必要な明るさものを部屋の隅においていく。 そうするとその部分というのは光だまりになりますから落ち着くし、人が集まるような雰囲気にもできるし、リラックスできるような空間が作れるんですね。


フロアライトとペンダントライトの違い
Q: 作り方におけるフロアとペンダントでの意識の違いは?

内山氏: 当然ペンダントはリビング・ダイニングの食卓のところでよく使いますよね。 そうすると十分な明るさがとれないと新聞も読めない。 だから明るくしなくてはいけないところには十分な明るさが必要なんですよ。

ただ、その時に、グレア(※1)がある器具を選んでしまうと非常に疲れてしまう。たからグレアがなくて、しっかり明るさをとるところはとる。

だから、ベッドサイドやソファーの横で読書するときに、読書ができて、なおかつ眩しくないというのは必要。平均に必要な理想の明るさは700lx(ルクス)(※3)と言われているが、天井の真ん中に一灯つけてシーリング(※2)でもっで全体の明るさを取ろうとすると、実際は新聞を読むときには(手元の部分では)明るさが取れない。眩しいんだけど明るさが取れないという状況でみんな新聞読んでるわけですよね。だからそうでなくて手元に明るさをもってきて新聞をよむと、ペンダントを下げてきて読書ができるというペンダントを選ぶということです。

Q: ペンダントでは機能的な部分というのはまず考えなければならないということですね。

内山氏: そういうことなんです。僕の提案するのは目線に入る天井からの光をなるべく避けて、いわゆる部屋の四隅に光をやって、あと食卓ペンダントにはグレアのないペンダントを下げるという使い方が理想なんですね。 だから、ダウンライト(※4)は埋め込み式で眩しくなくて良いというがやっぱり天井の、部屋の中心に下げておくと目線にはいる。 だから、ダウンライトも部屋の隅につけて壁面を照らしてやって、それにぶつかった光でもって(光量を)とるというのが理想なんですよ。


この部屋もそうなんですけどね、ああいう風に隅において壁を照らすことで明るさ感が出る。だから明るく感じるんだけれども、バウンドした光で部屋中が質の高い光になる。けれども天井の真ん中についている(シーリングなど)というのは天井は明るいのだが部屋の隅は暗い。

だから、眩しいのだが、明るさ感というのはない。(日本の)ほとんどの家はそういう生活をしている。例えば、ここではスポットライトで演出してますけれども、そうすると、絵や花などを照らせるわけです。そうするとものがすごくよく見える(映える)。

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さすがに内山氏のオフィスの照明使いは美しい。

(スポットライトを消して)スポットライトがない状態ではこれだけ違う。実際の(日本の)家庭ではない状態で生活している。ところが必要なところには必要な明るさがあって演出してやる必要がある。そうすると絵や花が活きて、なおかつ眩しくない。普通の人は知らないで、スポットライトを自分に向けてしまう。自分の目線には絶対入れてはいけない。

※1:グレア:眩しさのこと、照明においては様々な定義があるがここでは眩しさ全般をさす。
※2:シーリング:日本の一般住宅で見られる天井据え付け照明、おもに蛍光灯による。
※3:ルクス(lx):明るさ(照度)を表す単位。
※4:ダウンライト:主に天井に据え付ける、下方に向けた照明。小さな光源を利用することが多い。

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柔らかい光、上質な光機能、徹底した設計と検証日本のあかりについて
   
特集アーカイブ
2008年12月更新 第5回 人と人を繋ぐ人
2008年6月更新 第4回 理想の光を求めて
2007年9月更新 第3回 木の仕事師
2007年7月更新 第2回 竹とともに生きる
2007年6月更新 第1回 守られ続ける品質
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